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TrueVoice Vol.02

Vol.1 カリスマ マグロ釣り師 佐藤偉知朗インタビュー

津軽の海で追うクロマグロのナブラ
誰よりも正確なキャストで獲物を狙う・・・・・

本州の最北端に広がる津軽海峡。夏から冬にかけて、一帯にはソルトウォーターのアングラーにとって、究極のターゲットである大型のクロマグロが回遊する。ここが、佐藤偉知郎が主戦場だ。佐藤は、この海で、2008年9月に131.5キロ、2009年9月に186キロのクロマグロを釣り上げた。ルアーキャスティングで、しかもロッドを手に持ち立ったままのスタンディングファイトでのレコードだ。誰も知らない未踏の地に挑み、結果を出し続ける。佐藤は、そんな世界に生きている。
佐藤は、年間100回以上、海に出る。そして、船が港を離れると、風と潮の流れを注意深く読み始める。
「風も潮の流れも毎回違う。風が強ければ潮の流れと逆方向に船が行くこともある。どのくらいの速さで、どの方向に進みそうか。海に出ている間は常に見ています」。
沖に出て探すのは、大型魚に追われた小魚の群れが海面近くで盛り上がる「ナブラ」だ。ナブラからは、自動販売機のようなクロマグロが四方八方に飛ぶ。遭遇すれば、その瞬間から戦いの火ぶたが切って落とされる。
ただし、ナブラに正確にキャスティングするのは至難の業だ。「クロマグロのナブラは最大で直径100mにもなります。でも、ヒット率の高いクロマグロがいるのはそのうち数mの円。そこを見極めてゴルフのアイアンショットのような感覚で狙うわけです。風が強い上に、潮の流れがあるので足場も動く。ナブラ自体も移動している。風、潮、ナブラの3つが別々の動きをする中、計算して、ルアーを投げ込むのは本当に難しい。ときには45度違う方を向いて投げることもあります」。だが、そんな厳しい状況でも、佐藤のキャストは他の誰よりも正確だ。年間何度も同じ海に出て、数えきれないほど投げ込む。だからこそ、一流プロゴルファーのようなショットが可能になるのだ。

ミニマム級が超ヘビー級を戦う”恐怖”
満身創痍の代償を払うだけの価値と魅力

しかし、佐藤は意外にもナブラに投げ込むのは毎回「怖い」という。いざキャスティングとなると、条件反射的に、膝がガクガクと震えてくる。
「だって、100キロ以上の巨体が飛ぶのが実際に見えるわけだから。ミニマム級の選手が超ヘビー級に挑むようなものですよ。相手は圧倒的に強い。かかって引っ張られたら怪我をするかもしれないし、釣るのに何時間かかるかもわからない。10時間以上ファイトして、ラインが切れるかもしれない。まさに時間無制限の格闘技です。でもやっぱり投げたくなる。記録を狙いたいというより、目の前のクロマグロと真剣勝負がしたいという気持ちが沸いてくるんです」。
実際に186キロを釣り上げたとき、死闘は7時間にも及んだ。脱水症状になり、翌日は点滴を受けた。膝の半月板損傷、十字靭帯剥離という大怪我も負った。その他のファイトでは、足首を疲労骨折したこともあれば、靭帯が切れたことは3、4回ある。それでも佐藤はナブラを、クロマグロを追い続ける。代償を払うだけの価値と魅力があるからだ。

大切なのはチャレンジし続けること
タックルを管理し100%万全で挑む

なぜ、佐藤だけが釣れるのか――。単純な質問に佐藤はこう答える。「とにかくあきらめずにチャレンジし続けているからです。数多く海に出ることもそうだし、一度かかった魚を交代せず、最後まで戦うこともそう。50キロ以上がかかれば、10人中8人は交代するものですから。僕はこうしたマインドの部分が大きいと思います。相手は圧倒的に強いクロマグロですよ。野球でいえば、ものすごいピッチャーと対戦するようなもので、結果はほとんど三振です。でも、100打席立てば、1回くらい当たるかもしれない。1000打席立てば、ヒットできるかもしれない。そのためにも、毎回反省点を洗い出し、ロッド、ライン、リール、体力などを1つずつ改善しています」。
さらにタックルの管理が重要だと佐藤は言う。「例えばライン。僕は10年以上VARIVASのラインを使っていますが、PEラインは繊維であり、キャストするたびに擦れて細くなっていきます。だから60キロ以上の大物が一度でもかかったら、ラインは変えます。50キロ以下でも何回かかかれば、新しいものに変える。また、ラインにはこれもVARIVASの『PEにシュッ!』というコーティング剤を、巻いた時、24時間後、さらに24時間後の3回吹き付けて、染み込ませます。乗船中でもマメに吹き付ける。ラインにこれだけ気を使う理由は、100%万全の態勢で挑みたいからです。もし、手抜きが原因でバラしてしまったら、クロマグロに失礼だし、ルアーが口に刺さり、傷付けてしまうことにもなる」。

仲間の応援と協力に支えられる
あきらめるという選択肢はない

一方、佐藤が最も強調するのが、仲間の応援と協力だ。186キロとのファイトは夜に及び、辺りが漆黒の闇に包まれる中、港から4、5艘の船が駆け付け、並走してライトでラインなどを照らしてくれた。途中ガス欠になる船が出ると、僚船が港でガソリンを調達し補給した。皆最後まで佐藤をサポートし、ランディングの瞬間には、5、6人が船に乗り移り、超重量級の獲物を、力を合わせ引っ張り上げた。「周りの人たちが応援してくれる。力を貸してくれる。だから、途中であきらめるという選択肢はない」。
クロマグロゲームは、初心者や中級者でも楽しめるという。超大物を釣るのはもちろん無理だが、全国には10キロ、20キロのライトクラスが集まるポイントが数多くあり、そこからエントリーして徐々にステップアップすることを佐藤は勧める。「とにかくナブラを一度見てほしい。ものすごく興奮しますから。でも本当に周りが見えないくらい興奮するので、人にルアーを引っかけたり、キャストで勢い余って自分が海に落ちたりするなどの事故も起きやすい。それらの安全面に注意すれば、こんなに楽しめるゲームはないと思います」。
クロマグロゲームの先駆者は、その魅力を伝承しながら、今日も技術、体力、タックルに磨きをかける。そして、津軽の海では、200キロ、300キロクラスのまだ見ぬ強者が、そんな佐藤の挑戦を待っているのである。(敬称略)

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